プライベートエクイティファンドへの就職・転職
私は投資銀行に新卒で入社し、M&A等の投資銀行業務を経験したのち、プライベートエクイティファンドに転職をした。理由はここに述べられるようなものとしては一般的なもので、バイサイドならではの当事者意識や自由度の高い業務に魅力を感じたことが大きな要因のひとつである。
私は転職活動を行うにあたって、Webでの情報収集のうえ転職エージェントを利用するという王道の方法をとったが、その際Web上でのプライベートエクイティファンドへの転職活動の情報が限定的と感じたため、プライベートエクイティファンドへの転職を目指される方々にとって少しでもお役に立てる情報を提供できればと思っている。
プライベートエクイティファンドの採用
プライベートエクイティファンドは、ご存知のとおり10名~30名程度の少数精鋭での事業運営をしているため、基本的には即戦力が求められており、新卒採用はしていない。中途でプライベートエクイティファンドに投資プロフェッショナルとしてフロント採用されるためには、以下の経験が必要と考えられる。
- 投資銀行でのM&A業務の経験
- 戦略コンサルティングファームでのコンサルタントの経験
- 商社等の事業会社でのプリンシパル投資の経験
- 会計系FASでのFA業務若しくはバリュエーション業務の経験
- 大手監査法人での監査経験がある会計士
- 大手弁護士事務所でM&A業務の経験がある弁護士
以上の経験があれば、ひとまず転職エージェントに相談するか、プライベートエクイティファンドの知り合いに採用枠の有無を確認することで次のステップに進むことができる。
転職エージェントの重要性
転職エージェントは、なんとなく選んでしまいがちであるが、特にプライベートエクイティファンドのような特殊な業界への転職活動においては重要なポイントとなる。理由としては、大きく以下の3点が挙げられるが、私が利用したようなハイレベル転職に特化した転職サイトに登録することにより、プライベートエクイティファンドとコネクションのあるエージェントからそのタイミングでオープンなポジションを打診されるので、そのエージェントと一度話をしてみることが次のステップへの入り口となる。そのうえで、下記記載のとおり、担当者と馬が合う先にもう少し深い相談をすることにより、職務経歴書のブラッシュアップや面接の情報提供を受けながら、選考プロセスを進めていくのが良い。
私が実際に接触をした転職エージェントは、以下のような金融プロフェッショナルに特化したエージェントである。
プロフェッショナルバンク:
コトラ:
加えて、登録型の転職サイトについても履歴書や職務経歴書を登録しておくと、上記を含めたエージェントからスカウトメールが届くようになるため、それぞれ取り敢えず登録しておくだけでも、転職マーケットの動向や各種PEファンドの募集条件が確認できるので非常におすすめである。私が実際に利用したハイレベル転職サイトは以下のとおりである。
キャリアカーバー:リクルートのハイクラス向け転職サイト
応募できるファンドが限定的になる
ファンドによっては限られたエージェントしか利用しておらず、ファンドに特化したエージェントを通じてでなければ応募できないファンドが存在する。
ファンドに特化したエージェントは数えるほどしかなく、その中で担当者と馬が合う先を数社選択すれば十分である。
希望と異なるファンドを紹介される
PE業界に理解の浅いエージェントでは、こちらが希望する条件とは大きく異なるファンドを紹介されてしまい、結果的に無駄な時間を使わされる可能性がある。
個人的な失敗としては、転職エージェントがプライベートエクイティファンドの業務を深く理解しておらず、ベンチャーキャピタルファンドに応募されてしまったことだ。私がバイアウトファンドを希望していることは確りと説明したつもりであり、それに対して是非応募してほしいという先を紹介されたものであるが、対象会社がPE事業を行っているとは聞いたことがなく、ホームページを確認してもそのような情報が出てこなかったにもかかわらず、エージェントの意向で応募されてしまい、面接まで行った。案の定面接開始後すぐに両者のニーズの不一致が顕在化し、数分で面接が終わってしまったという経験がある。お互いに非常に不幸な時間であったし、こちらとしても業務の合間を縫って面接に赴いているのでストレスにもなった。このような事態を避けるべく、転職エージェントは業界に特化している先を利用することが重要と思う。
フォローアップがない
エージェントによっては、プライベートエクイティファンドへの転職サポート実績が乏しく、エージェントの価値のひとつである選考プロセスや面接官の側面情報等の面接TIPSの情報提供内容に大きな差がある。
面接プロセスを知っておくことは重要ではないし、PEファンドの面接での質問はスキルチェック以外は非常にスタンダードなものであるので、特に想定問答集もあまり意味をなさないが、エージェントとファンドの担当者との関係性から面接のフィードバックを得られることがあり、それは今後の転職活動においても非常に意義があるため、そういう点において実績のあるファンド特化型エージェントを利用することをおすすめしたい。
職務経歴書及び履歴書
転職エージェントを選び、候補先を紹介してもらったあとの次のステップとしては、各候補先に送付する職務経歴書及び履歴書の準備である。こちらもしっかりとしたエージェントからはサポートが得られるので特に述べることはないが、経験してきたディールの内容及び役割を簡潔にまとめることで十分と思われる。
選考プロセス
ファンドによって選考プロセスは大きく異なるが、敢えて一般化すると以下のようなものが多い。
- 書類審査:職務経歴書及び履歴書による選考
- 一次面接:HR担当者による面接
- 二次面接:アソシエイト~ディレクターによる面接
- スキルチェック:フィナンシャルモデルのテストや投資仮説に関するディスカッションによるスキルチェック
- 三次面接:パートナー面接
- 最終面接:代表パートナー面接
- カジュアルディナー:ファンドによってはレストランやキャバクラなどで人間性をチェックする
- オファー面談:オファー内容を決める最後の面談
ファンドの選考プロセスは、一般的な就職活動における選考プロセスに比べて非常に長く時間も必要となる。ファンドは10~30名の少数集団であるため、基礎的な能力はもちろん必要でありスキルチェックではその点が厳しく審査されるが、それよりも重視されるのがメンバー全員とうまく働けるかどうかというパーソナルな部分である。それらをチェックするためメンバーの大部分と面接を行い、ディナーなども共にすることでいわゆる素の人間性も評価され、全員が合格という判断をして初めてオファー面談に至ることができる。
基本的な質問とそれに対する回答方針やスキルチェックの内容や合格するために必要な知識については別途記事にしているので以下の記事もご覧いただければと思う。
プライベートエクイティファンドの面接についてはこちら。
プライベートエクイティファンドのスキルチェックについてはこちら。
面接やスキルチェックにおいては、一定の知識水準が求められるため、下記の記事でご紹介する業界知識・財務知識に関する書籍や経営戦略・論理的思考能力に関する書籍もご参考にしていただきたい。